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1000字中の備忘録

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絶滅企業に学べ!

電子書籍
電子書籍で読み終えた本について色々語っていくシリーズ。今回は『絶滅企業に学べ!』(作:指南役 2015年3月30日発行)

 

booklive.jp

 

優良企業は、そのとき、何を間違えたのか? 大映フォーライフレコード、山一證券など歴史に名を残す10の会社が倒産した理由に迫る本。本書のキーワードは2つ。絶滅企業がかつて繁栄を誇ったノウハウから、未来へのヒントを見つける「温故知新」。そして絶滅企業に至った理由を知ることで、同じ過ちを繰り返さないための「反面教師」。先人の偉業に光を当てた者だけが、未来への道を見つけることができる。
以上、booklive!の作品内容より引用

絶滅企業に学べ! - 電子書籍| BookLive!

 

スティーブ・ジョブズによるアップルの見事な復活劇。本書ではその秘密と、残念ながらアップルのようにいかずに倒産した日本の大企業10社を見ることでこれからの企業に求められるもの、いわゆる企業が持つDNAとは何かを探っていく……というのが大まかな流れである。
私のような平成の時代に生まれた身としてはかつて存在していた大企業のことを知りつつ、何故経営が立ち行かなくなってしまったのかを知る上でも有益な資料として活用できる一冊である。
 
本書で挙げられている絶滅企業の中でも特に興味を惹かれたのは、「世界のクロサワ」を作った映画界の風雲児「大映」である。
1942年、戦時中の中で二大映画会社、松竹と東宝に対抗するために、永田雅一の手によって大映は設立された。黒澤明監督の『羅生門』を始めとしたヒット作を生み出した後に、テレビの台頭によって時勢を読み違えた結果、滅んでしまった企業である。
 
大映のエピソードは「成功神話とは何なのか」を色々と考えさせられるものであった。大映が倒産した原因は「旧来のシステムに固執したこと」、かつて生み出した「成功神話」をもとに作り上げた土壌は、時代の流れに合わせて根底から変えていかなければいけないものであった。しかし、大映は変えることを良しとせず、結果的に流れに乗ることができなかったために会社は滅んでいった。
このように、一度生み出した成功神話をあたかも必勝手のように捉え、最終的に取り返しのつかない事態になてしまうことは現代でも大なり小なり存在している。たちが悪い点はその成功神話が「当時としては過去の失敗談をもとに作り上げたノウハウ」であったり、「時代の流れでやむを得ず作ることになった制度」が混ざっている点であろう。傍目から見ればその成功談に甘んじることは決して悪い判断ではないとすら思えてしまうものもある。
今は成功神話という言葉でひとくくりにされているが、その中には変えていくべきものと、後述する企業のDNAのような受け継いでいくべきものが一緒くたにされて混在しているように思える。
 
例えば、「五社協定」は他社の引き抜きを防ぐために、言わば時代の流れの中でやむを得ず生み出されたものだった。しかし、当初は新たなスターの誕生という副産物につながった。
結果的にこの「五社協定」によって滅びた大映であったが、一時的に映画界を盛り上げる種火になった「五社協定」がまさか後になって会社滅亡の原因となるとは、締結した当初は誰が予想したであろうか。誰もしなかっただろうし、したくもなかったことは想像に難くない。それどころか、場合によっては「五社協定」は、後の映像事業のDNAにすらなりえた要素であると私は考えている。
 
五社協定」は自身の権益を守る為に他社の引き抜きを禁じ、ニューフェイスの誕生という効果を生み出した。現代のテレビ事業で考えるならば、テレビ局がそれぞれの独自路線を打ち出し、登場するスター(芸能人)がテレビ局によって全く異なるという未来が存在していたかもしれない。
  • バラエティに秀でた芸能人達が様々な舞台で笑いを提供するテレビ局
  • 局によって全く毛色の異なる俳優が活躍する複数のドラマ専門のテレビ局
  • クイズ番組をはじめとして、視聴者参加型番組に特化したテレビ局
  • 素人玄人、そしてテレビ局の垣根を超えて様々な歌自慢が集う”歌”に焦点を当てたテレビ局
……といったそれぞれに異なった個性と顔の持つテレビ局、つまりは「五社協定」をDNAとしたテレビ事業だって存在していたかもしれない。時代や場所、人々への与える印象一つで必勝手と核地雷がせわしなく入れ替わる今の世の中、「時代の流れを読む」というのは中々一筋縄ではいかない技術である。
 
本書では企業が存続するために最も大事なものは「企業のDNAを受け継ぐこと」にあると主張している。ここで言う企業のDNAとは「その企業が次代へと受け継ぐべきもの」であり、企業のDNAを継承し、現代に即した形に生まれ変わらせることこそが重要なのだと述べられている。
しかし、次代の若者は何を継承し、どういった形で生かすのかは、DNAを生み出した当人には全く予想がつかない。アップルのスティーブ・ジョブズの例であっても、かつてアップルをクビにならなければこのような見事な復活劇は決して存在しなかったであろうと本人も認めている。企業のDNAを継承するということは、思っている以上に運任せ…もとい、人任せな一面が強いのかもしれない。
DNAを受け継ぎ、時代に即した形に進化させるというのはその企業の中では時代や場所によっては不適切な場合も存在している。例えば、中島飛行機の後継会社スバルが戦後のジェット機開発で大きな成果を挙げているように、倒産後も得たノウハウを時代や場所を超えて存分に活かした例も少なからず存在する。
 
企業の倒産というとあたかも失敗のように思えるが、実際のところはDNAを受け継いだ人材にとって「役不足」となった企業が自然淘汰されているだけなのかもしれない。企業のDNAを継承した人材は、場所や環境を問わず次の世代へと継承していくのだ。
会社の持つDNAを受け継ぐのは会社ではなく、あくまで会社に所属する人間である。そして人間が持つ力というのは、企業という器では制御しきれないほどに大きく、その力を無自覚に行使しているのかもしれない。