1000字中の備忘録

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凶暴な金魚

ゲーム『モンスターハンターシリーズ』に登場する「イビルジョー」というモンスターを知っているだろうか。

 

単純な強さならラスボスクラスなのだが、そんな強さを持ったモンスターが全く関係ないクエストで突如乱入してくるのである。そのため、初めてみたときのインパクトは非常に大きい。
初登場作品となった『モンスターハンター3』では真偽入り混じった噂が飛び交い、都市伝説が生まれるレベルで度々話題になったものである。かくいう私も当時『モンハン3』をプレイしていたので、その手の噂はまとめサイトなどを知らない身でも聞き及んでいたのだから相当なものであろう。多分。
 

  『モンスターハンター』というゲームは、世界観にも凝ったものがあり、モンスターに関する生態がゲーム上でも少し語られている。そこでイビルジョーの説明を少し見ていただきたい。

以下、モンスターハンター大辞典Wiki より引用
モンスター/イビルジョー - モンスターハンター大辞典 Wiki*

特定のテリトリーは持たず、常に獲物を求めて各地を彷徨っている。
渓流や水没林などの気候の安定した地域では勿論、昼夜での寒暖差が激しい砂漠地帯、
凍土、火山、氷海、火山活動を開始した地底洞窟といった極めて厳しい環境下にある地帯、
更には周囲から隔絶されているはずの孤島や天空山にすら姿を現す。
現在ではイビルジョーの目撃情報は世界中に及んでおり、
その環境適応能力の高さはあらゆるモンスターの中でも随一である。
また、その性質から他の大型モンスターのテリトリーにも平然と侵入し、
地域一帯のモンスターを喰らい尽くすことで生態系を崩壊させてしまう
実際にとある地域に生息する全生物の個体数が激減、
地域一帯の生物が絶滅の危機に瀕するという事件が発生し、
その原因がイビルジョーの襲来だったという事例もあった。
これがイビルジョーが「全生態系にとって極めて危険」とされる所以である。

先ほども述べたように、イビルジョーは『モンハン』世界の中でも最高クラスの化け物である。このように、生態系の外部から強大な生物が入り込むと、生態系が崩壊することが考えられる。直接巻き込まれた生物の絶滅はもちろん、周辺で暮らす生き物にも影響を与える事態になりかねない。
 
ゲーム内の設定の話であるため、現実感が乏しいかもしれないが、現実でもこれは「外来種問題」として広く浸透しているものである。何らかの理由(人間の手、不幸な行き違いなど)で外部から入り込んだ生物が不法投棄同然に放置され、その環境下で独占といってもいい形で適応し、周辺の生態系を脅かしているのである。『モンハン』の場合はイビルジョーという、自然災害みたいなものが形となって表れているが、現実だと人為的な手によって起きるケースが決して少なくない。
 
 
 
 
 
最近、金魚の放流イベントで物議を醸している。泉佐野市で行われている金魚の放流イベントが「放流」から「配布」に変更されたニュースだ。
 

asay.hatenadiary.jp

 

基本的に↑の記事の方が詳しいのでここでは適当に解説しつつ書きなぐる。
 
記事内では「中止」と言われているが、約8000匹の金魚を丸ごとゴミ捨て場に放り込むとかそういうことはせずに、ちゃんと配布しているので中止というのもちょっと違う気がする。ちゃんと金魚は市民の手に渡っているので、今のところは「変更」になったというニュアンスの方が正しい気がする。
 
「放流」によって発生する問題は、単純に金魚がかわいそうとかおいしそうとか以上に、金魚が生態系に大きな影響を与えるかもしれないという点が非常に重要である。
金魚はそもそも自然界で生きることを想定した生き物ではない。フナを観賞用に品種改良した末に生み出された生き物であり、人間の管理の下で生存してきた歴史は1000年を超えるとすら言われている種である。なので、野生の金魚は存在しない。ポケモン図鑑で言うところの「せいそくち ふめい」である。人間の管理下で暮らすことが半ば前提となっている生き物であることはしっかりと把握してほしい。ついでに言えば、昔から金魚を川や湖に放流すること自体は禁止されている。
 
そうした生き物を自然界に放流するとどうなるか、他の肉食生物に狙われるのはもちろんのこと、金魚自身がメダカなどの小型魚を食べたり、突然変異によって周囲の生態系を脅かすような元・金魚が誕生する可能性だって考えられる。突然変異以外にも、フナと交尾することでフナ自体が変異したり、単に金魚と言ってもその可能性は計り知れない。
とにもかくにも、万が一のことがあった場合、そのつけは一市町村程度では到底支払えないものになることは確かである。「風が吹けば桶屋が儲かる」というように、金魚を放流することで全く関係ない生物(シロナガスクジラなど)が滅ぶ可能性が十二分にあるということである。
 
放流イベント自体は30年以上続いていることから、今になって「話題」になるのは我々の生き物(今回に限れば金魚)に対する認識はまだまだ甘いと言わざるを得ない。そこらへんは理科とか生物の授業で習うべきだと思ったけど、道徳の方が良いのだろうか。
 
ここまで考えて、それを泉佐野市がどこまで想定していたかは興味深いところである。ここでは、「考えていたパターン」と「考えていなかったパターン」の2つに分けて考えてみるとする。
 
考えていた場合、あらかじめ専門家が入念な調査を行い、「ここで金魚を放流しても問題ない」という結論が出た上で行っているというパターン。この時想定されるのが「金魚そのものが他の生物に大きな影響を及ぼさないか」「金魚狙いで訪れる肉食動物のことも考えられているか」など実に様々である。放流イベントを執り行う時はもちろん、仮に中止してしまった場合のことも考えておかなければならない。金魚そのものは肉食動物にとって格好の捕食対象となる。毎年そういった「狩り場」を用意しているという認識も合わせて持っておく必要があるだろう。
考えていなかったパターンというのは単純であり、運悪くそういった生態系に少しでも詳しい市職員が泉佐野市では存在しなかった(放流イベントに関わることがなかった)のだろう。今後、泉佐野市はさかなクンさんのような人材を積極的に取り入れていくべきなのかもしれない。
 
どちらにしても、元からそういった生態系に対する配慮が欠けていた。もしくは何十年と続けていく中で実施する中でイベントの本質が変わってしまったのかもしれない。
 
今回の泉佐野市が行っている放流イベントで最終的に問題になってくるのは以下の2点である
  • イベントを続けることで金魚が運よく自然界に適応し、周辺の生態系に影響を与えること
  • 放流をやめることで「狩り場」として認識していた生き物が食料を得ることができなくなり、最終的に生態系に影響が出ること
 
生態系に影響が出るとその近くで生きる生物にも影響が出てくる。むろんこれは人間であっても例外ではない。自然界に起きる変化は、きっと我々が想像するはるか上のレベルで、人間社会にも影響を及ぼすであろう。こういった出来事の積み重ねによって、半魚人のような生命体を生み出し、人間を食い殺すような未来もなくはない。
 
 
ちなみに、金魚の「虐待」であるという見方は、その人が金魚をどういった扱いをしているかによると考えている。
今回の放流は従来から想定されてきた金魚と人間の関係とは大きく異なる。誰がどう思おうとこの「放流」は金魚の命を捨てるという結果に繋がりかねないのは確かである。ただ、金魚自体は観賞用であり、人間を楽しませるという目的で作られた生き物であることは確かである。
金魚という自然界に存在しない生き物を、わざわざ自然界に連れ出すという行為をどう捉えるかは個人次第である。ただ、人の管理下で生きることが前提となっている生き物を、わざわざ自然界に連れ出すのは、少々無粋ではないだろうか。
 
金魚は人間の手によって品種改良されて生まれた生き物であることは冒頭で述べたはずである。人の手によって生まれた以上は、人の手が届く場所でけじめをつけるのが、何かと後腐れがないというものである。